読み終えた、その第一声
切なくて、優しくて——そして最後は、ホッとしました。
春も夏も、読み終えたあとは胸に重いものが残りました。でもこの巻は少し違う。切なさはちゃんとあるのに、読み終えたときには、そっと肩の力が抜けるような安堵がありました。
暁佳奈さんの『春夏秋冬代行者 暁の射手』。シリーズ3作目にあたる一冊です。今回もネタバレなしで書いてみます。
どんな話?
この世界で巡っているのは、四季だけではありません。朝と夜の訪れもまた、それを司る者たちによって支えられています。
朝を齎す者——「暁の射手」。主人公の花矢は、その役目を負う少女です。
そして、四季の代行者たちと決定的に違うことがひとつ。朝は、毎日訪れるということ。つまり彼女の務めに、休みはありません。来る日も来る日も、天候がどうであろうと、朝を呼ぶために立ち続けなければならない。
そんな過酷な役目を、傍らで支え続けるのが彼女の護衛官です。けれど花矢の胸には、ずっと消えない思いがありました——自分のせいで、この人の人生を台無しにしてしまっている、と。
※物語は『春の舞』『夏の舞』の後にあたります。世界観を知ってから読むと、より深く楽しめます。
心に残ったこと
負い目と、それを受け止める優しさ
この巻で描かれるのは、四季の物語とはまた違う切なさでした。
理不尽な世界に立ち向かう、という以前に——自分の存在が、誰かの人生を縛っている。花矢が抱えているのは、そういう種類の苦しさです。守られれば守られるほど、申し訳なさが募っていく。誰も彼女を責めていないのに、彼女だけが自分を責めている。
そして胸を打たれたのが、それに対する護衛官の答えでした。彼は責めるでも、大げさに慰めるでもなく、ただ静かに伝えるんです。自分の意志でここにいるのだから、あなたは何も悪くない、と。そして、変わらずそばにい続ける。
多くを語らず、離れない。その優しさが、読んでいて本当に沁みました。
ひとりじゃなかった
物語の途中、花矢は大きな困難に直面します。
そこで彼女が知るのは——自分は、ひとりで抱え込まなくてよかったのだということ。手を差し伸べてくれる人がいる。力になろうとしてくれる人がいる。ずっと「自分のせいで」と背負ってきた少女が、誰かに助けを求められるようになる。
その過程が、切なくて、あたたかい。読んでいるこちらまで、救われるような気持ちになりました。
読後に、ホッとできる
シリーズを読んできた方はご存知の通り、この世界はとにかく過酷です。春も夏も、胸を締めつけられるような展開が続きました。
でも、この『暁の射手』は——読み終えたあと、深く息をつけました。切ないのに、優しい。苦しいのに、最後にちゃんと温かいものが残る。シリーズの中でも、いちばん”ホッとできる”一冊だったと思います。
もちろん、泣かされましたけれど(笑)。
こんな人におすすめ
- 『春の舞』『夏の舞』を読んで、この世界にもっと浸りたい人
- 誰かを想うがゆえの、切ない負い目の物語が好きな人
- 過酷なだけでなく、読後に安堵できる物語を読みたい人
こちらは上下巻ではなく、一冊で完結する物語です(春・夏よりも手に取りやすいかもしれません)。
まとめ
切なくて、優しくて、最後はホッとした——読み終えて残ったのは、その感覚でした。
「自分のせいで」と抱え込んでいた少女が、少しずつ変わっていく。その傍らには、変わらず隣にいてくれる人がいる。四季の物語とはまた違う、静かで温かい一冊です。
この物語は、春と夏の物語の先にあります。まだの方は、前作『夏の舞』からどうぞ。



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