
こんにちは、遊華です。今回は「傾いた館」で起きる不可能犯罪、島田荘司さんの『斜め屋敷の犯罪』をご紹介します。
読み終えた、その第一声
「え、まじか。執念深すぎやろ……」
真相を知ったとき、思わずそう呟いていました。呆れと感嘆が、半分ずつ。こんなことのために、そこまでやるのかと。
御手洗潔シリーズの2作目です。前作『占星術殺人事件』とは、まったく違う方向から殴られました(いい意味で)。
今回もネタバレなしで書いてみます。
▼前作『占星術殺人事件』の感想はこちら

どんな話?
北の大地に建つ、奇妙な館。その屋敷は——傾いています。
床も、柱も、階段も、すべてが斜め。そんな異様な館に、クリスマスの夜、招かれた客たちが集まります。そして雪に閉ざされたその夜、密室で殺人が起きる——。
傾いた館。降り積もる雪。閉ざされた状況。舞台は完璧に整っています。あとは、この不可能状況をどう解くのか。
島田 荘司——1948年広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃のデビューを果たして以来、『斜め屋敷の犯罪』『異邦の騎士』など50作以上に登場する探偵・御手洗潔シリーズや、『奇想、天を動かす』などの刑事・吉敷竹史シリーズで圧倒的な人気を博す。2008年、日本ミステリー文学大賞を受賞。また「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」、台湾にて中国語による「金車・島田荘司推理小説賞」の選考委員を務めるなど、国境を越えた新しい才能の発掘と育成に尽力。日本の本格ミステリーの海外への翻訳や紹介にも積極的に取り組んでいる。(「BOOK」データベースより)
驚きどころ
執念深すぎる、その仕掛け
真相にたどり着いたとき、まず出てくるのは「すごい」ではなく「そこまでやる?」でした。
詳しくは書けませんが、この事件に仕込まれた仕掛けは、とにかく手が込んでいます。労力、準備、執念。犯人のやりきる力が異常なんです。ミステリのトリックというより、ひとつの大事業を見せられている感覚に近い。
前作『占星術殺人事件』は、真相を知ると「あれ、意外と単純だった」と力が抜けるタイプでした。でも本作は真逆。知れば知るほど、その手の込みように呆れ返る。同じ作者、同じシリーズなのに、驚きの方向がまるで違うのが面白いところです。
その動機で、そこまでやるのか
そしてもうひとつ驚いたのが、その執念を支えていた動機でした。
これも詳しくは書けないのですが——それだけの労力を注ぎ込むにしては、なんというか、釣り合っていない。「その動機で、ここまでやる?」と、二度目の「まじか」が来ます。
労力と動機のアンバランスさ。そこが可笑しくもあり、少し不気味でもあり。読み終えたあと、じわじわ効いてきました。
御手洗、なかなか出てこない
シリーズものとして、いちばん新鮮だったのがこれです。
主役である御手洗潔が、なかなか登場しません。 わたしが読んだ文庫は全375ページほどでしたが、彼が姿を見せたのは250ページあたり。全体の3分の2を過ぎたころです。
シリーズの中心人物なのに、この遅さ。「まだ出てこないの?」と思いながら読んでいました(笑)。でも、そのぶん登場したときのテンションが上がるんです。「やっと来た!」と。
そして相変わらず、ふざけていて面白い。前作で彼を好きになった人なら、この登場の仕方も含めて楽しめると思います。
こんな人におすすめ
- 大がかりで、とんでもないトリックを浴びたい人
- 雪に閉ざされた館、密室——本格ミステリの様式美が好きな人
- 『占星術殺人事件』を読んで、次に進みたい人
なお、本作から読んでも物語は理解できますが、御手洗という探偵を知ってから読むほうが、登場シーンの楽しさは倍増すると思います。
まとめ
「執念深すぎやろ」——読み終えて出てきた言葉が、そのままこの作品の魅力でした。
呆れるほど手が込んでいて、それでいて律儀に成立している。前作とはまるで違う方向から驚かせてくれる一冊です。御手洗潔シリーズ、まだまだ続きが楽しみになりました。


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