『アリアドネの声』感想|最後まで息がつけない、ドローンの救出作戦【ネタバレなし】

読書感想

こんにちは。遊華です。今回は、地下に取り残された「見えない」「聞こえない」「話せない」の三つの障害を抱える、女性をドローンで救い出す物語。井上真偽さんの『アリアドネの声』をご紹介します。

読み終えた感想

読み終えて最初に浮かんだのは、この一言でした。

最後まで、息がつけなかった。

ページをめくるあいだ、ずっとハラハラしっぱなしで最後のページまで気が抜けませんでした。そして、この本はそれだけでは終わりませんでした。

『アリアドネの声』はどんな小説?

幼いころ、救えたはずの事故で兄を亡くした青年・ハルオ。その後悔を抱えたまま、彼は災害救助用のドローンを作るベンチャー企業に就職します。

仕事で訪れたのは、障がいのある人も暮らしやすいように設計された地下都市「WANOKUNI」。そこで巨大地震が起こります。多くの人が避難するなか、ひとりの女性が地下の危険地帯に取り残されてしまう。

彼女の名前は中川博美。目が見えず、耳も聞こえず、話すこともできない。崩落と浸水で救助隊は近づけず、残された時間はおよそ6時間。頼みの綱は、ハルオが操縦する一台のドローンだけでした。

~著者について~

神奈川県出身。東京大学卒業。『恋と禁忌の述語論理(プレディケット)』で第五十一回メフィスト賞を受賞してデビュー。二〇一六年刊の『聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた』が「2017本格ミステリ・ベスト10」の第一位となる。(Bookデータベースより)

実際に読んで感じたハラハラ

画面越しにしか、助けられない

ハルオが彼女に届けられるのは、ドローンだけです。そばに行って手を引くことも、声をかけることもできない。画面の向こうにいる人を、離れた場所から導くしかない。

一歩進むたびに「大丈夫か」と息をのむ。そのもどかしさが、ずっと続きます。

見えない、聞こえない、話せない人を、どう導くのか

相手は、光も音も届かない場所にいます。こちらの意図をどうやって伝えるのか、合図ひとつ送るのにも工夫がいる。当たり前にできると思っていたことが、ひとつずつ壁になっていく。

彼女がいま何を感じているのか、こちらからは見えない。その状況そのものが、読んでいてとても苦しく、目が離せませんでした。

助ける側にのしかかるプレッシャー

もうひとつ印象に残ったのが、助ける側の重圧です。失敗できない作戦に、周囲の期待や視線が集まっていく。ハルオが抱えてきた後悔も重なって、追い詰められていく様子に、読んでいるこちらまで胸が苦しくなりました。

「間に合うか」だけではなく、「助ける側が持ちこたえられるか」。その両方のハラハラが、この作品ならではだと思います。

「これってミステリー?」と迷っている人へ

あらすじを読んで、「これは本当にミステリーなの?」と迷う人もいるようです。

私の答えは、ミステリーと言えばそうかもしれない、でも個人的には人間ドラマに近いです。謎を解く楽しさよりも、助けたい、助かってほしいという気持ちでページをめくっていました。

最後に驚きはあります。ただ、それも含めて、人の物語として心に残る一冊でした。犯人当てや推理を楽しみたい方には少し物足りないかもしれませんが、緊張感のある物語が好きな方にはぜひ読んでほしいです。

最後のページに待っていたもの

結末については何も書けません。間に合うのか、どうなるのか。それはぜひ、読んで確かめてください。

ひとつだけ言えるのは、張りつめた6時間の先に、思ってもみなかった驚きが待っていたということ。最後まで気が抜けなかったぶん、その驚きは余計に心に残りました。

どんな人におすすめ?

  • タイムリミットもののハラハラが好きな人
  • 謎解きよりも、人の物語を味わいたい人
  • 最後まで一気に読める一冊を探している人

まとめ

最後まで、息がつけない6時間でした。

ハラハラが最後まで続いて、そのあとにもうひとつ驚きが来る。読み終えたあと、タイトルの「アリアドネ」という言葉が、少しだけ違って見えた気がします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました